ドク・オーチャンの独り言(その26)


--サンタクロースは本当にいるの?--

 毎年、この時期になると、ほとんどの子どもたちの頭の中にこの疑問が湧いてくることでしょう。いや、しかし、はなからサンタクロースなんているはずがないじゃないか、何を寝ぼけたことを言っているんだとばかり、白けきっている子どもも案外少なくないのかも知れません。

 貴方は、サンタクロースがいると信じていますか?遠い北の国からトナカイに引かせた大きなソリに乗って、クリスマス・イブの空を翔てやってくる白いひげの優しそうなおじいさん。よい子の寝ているそばまでやって来てすてきなクリスマス・プレゼントを枕元に置いていってくれる赤いコスチュームの謎の人。誰も見たことがないはずなのに、なぜか誰でもその姿を知っているという不思議な人。毎年クリスマス・イブにほのぼのとした心暖まるファンタジーを思い起こさせてくれる人。
 子どもの頃に、少しだけそういう人の存在を信じていたことがあったような気がする大人は、自分が親になって、小さな子どもたちにやっぱりその人のことを想い出させるようにするのではないでしょうか。

 毎年クリスマスになると、子どもたちがまだ小さい頃に北米で過ごしたクリスマスのことを想い出します。その頃、筆者たち両親は、まだ子どもたちがサンタクロースを信じているのだろうと思っていました。ですから、クリスマス・シーズンにフロリダにドライブ・ツアーに行った時でも、クリスマス・イブの夜に子どもたちの枕元に置いておくはずのサンタクロースプレゼントを、必ず両親だけでこっそりと買いに出て、それを見つからないようにミニバンの秘密の荷台に載せて置いたのです。


 クリスマス・イブの日にはイルミネーションに飾られた大きなツリーがここかしこに立っているアメリカ南部のチャールストンという街のモーテルに泊まりました。食料品を買い出しに行くため、子どもたちだけをモーテルに残して(本当はそんなことをすると通報されるのですが)筆者たち両親だけで車で出かけました。

 後で大きくなった子どもたちに聞いた話ですが、その留守に、子どもたちはモーテルに置いてあった旅行用の荷物を一つ残らずチェックしたそうです。しかし、不思議なことにやっぱりサンタクロースのプレゼントは見つからなかったそうです。やはり親の方が一枚上手で、クリスマス・プレゼントは常に車の中の秘密の荷台にこっそりと隠してあったのです。ですから、親が車で買い出しに行けばそのままプレゼントも車に乗って親と一緒に移動していたのでした。

 子どもたちはシンプルですがボリュームのある食事をたらふく食べてテレビを見たり夜のお散歩をしたり何か遊びに興じたりしているうちに、こてんと寝てしまいます。子どもたちが寝静まったのを確認すると、抜き足差し足で外に停めてあるミニバンの後ろのドアを開けてこっそりとしまってあるクリスマス・プレゼントを取り出すのでした。そして、安らかな寝息を立てている子どもたちの枕元に一つ一つサンタクロースのプレゼントを置いていくのです。この作業を無事に終わると、ホッとすると同時に「ムフフ、また今年もしてやったり!」という満足感で筆者たち両親は顔を見合わせて目配せをして、自分たちも床に着くのでした。

 しかし、後で大きくなった子どもたちに聞いてみると、どうもお互いに騙し騙され合いを繰り返していただけのような気もします。子どもたちは、もし自分たちが「サンタクロースなんていないんでしょう。パパとママがこっそり枕元に置いたんでしょう」などと言ってしまったが最後、もう二度とクリスマス・プレゼントはもらえなくなってしまうかも知れないというおそれから、黙ってサンタクロースがいるふりをしていたようなのです。

 一つの考え方として、真実なんて、所詮人の心の中にしか存在しないものであるとも言えます。たとえ現象的に事実があったとしても、人がそれを信じなければそれはもはや真実ではなくなってしまうこともあるのです。その逆もあるでしょう。サンタクロースは現象としてはやはりどこにもいないのかも知れません。しかし、クリスマスに、親が何か子どもたちの喜ぶことをしてあげたい、そして子どもたちも親が自分たちのために一生懸命何かしてくれている、というようなほのぼのとした心の暖め合いのチャンスを作ってくれるのが「サンタクロース」であるとすれば、やっぱりクリスマス・イブの立役者として立派に存在しているのです。
 よい子のみんながサンタクロースからすてきなクリスマス・プレゼントをもらえますように。

Merry Christmas!

(写真はカナダで買ったクリスマス・カードです)



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