ドク・オーチャン の 電子マンガ・クリニック

カルテ2 熱のお話

熱は非常事態アラーム

  今月は、急患センターの小児科で最も多い症状、
 「熱」のお話です。子どもは急に高い熱を出すことが
 よくあります。とくに、生後6カ月頃からは、
 高熱を出す回数が増えます。
 これは、お母さんからもらった抵抗力を、
 この頃に使いきってしまうからです。

  頭のちょうど真ん中の、「視床下部」というところに、
 体温をコントロールする中枢があります。
 これは、ちょうどエアコンのコントローラーのような
 働きをしています。体のどこかで白血球がエイリアン
 (ウイルスや細菌)と遭遇して戦闘状態になると、
 中枢に向けて信号弾のような物質を発射します。
 これが体温調節中枢にキャッチされると、
 コントローラーが高温目盛りにセットされます。

  熱は中枢から身体全体に発信された非常事態アラームなのです。

  子どもは体温調節中枢の働きが未熟なので、
 まだうまく体温のコントロールができません。
 そのため、突然に高熱が出てしまうのです。


熱があっても温めすぎないで!
   体温コントローラーが高温にセットされると、
  寒気がして震えがきます。この体の震えで
  熱が発生して体温が高くなるのです。
   熱性けいれんは、ちょうどこの震えの
  特別に極端な形として捉えることもできるでしょう。
   寒気がして震えがあれば少し厚着でもよいのですが、
  いったん熱が出てしまったら、、着せすぎは禁物です。
  思いっきり温めて汗を出させ、まるでサウナのように
  して風邪を追い出そうというのは、大間違いです。
   ゆでダコのように真っ赤になるまで厚着にしたり

  温めたりするのは体によくありません。

   高熱のときは、涼しくしましょう。手足が冷たければ、そこだけ温めましょう。


平熱を知っておこう
  一般に、子どもは大人より体温が高く、37.5℃までは平熱
 といわれますが、個人差もありますから、ふだんの体温を
 知っておきましょう。平熱でも、朝は低め、夕方は高めに
 なります。38℃以上や、平熱よりも1℃以上高ければ高熱です。
  子どもは熱を出すつど、新しいエイリアンを撃退する力を
 身につけていきます。大人がめったに熱を出さなくなるのは、
 抵抗力が十分身についていることと、体温調節中枢の働きが
 安定しているからです。
  体温を測るとき、電子体温計でも1分間以上はしっかりと
 脇の下に当てておきましょう。あわてて測り終えてしまうと、
 誤差が出やすくなります。また、手持ちの電子体温計の特性
 (体温が高く出やすいか、低く出やすいかという目盛りの傾向)
 を知っておくためにも、ふだんの熱を測ってみましょう。
  部屋を暖めすぎたり、着せすぎたりすると、体温が高く出て
 しまいます。また、測る前に手を上げて脇の下を開いたりすると、
 実際よりも体温が低く出てしまいます。
  最近は、耳の穴で体温を測れる体温計もあります。
 この体温計で、子どもはあまり嫌がらずに体温が測れるようです。
「知恵熱」という熱はない
  子どもは突然熱を出したかと思うと、
 もう翌日は平熱になってケロッとしていたりします。
 一体、突然の発熱の原因が何だったのか、わからない
 ようなことがあります。こんなときに、昔から
 「知恵熱が出た」といわれるようです。おそらく、
 子どもの知恵がつくころに、原因のはっきり
 わからない熱がよく出ることから生まれた言葉なのでしょう。
熱が高いと脳がやられる?
  熱が高いからといって、脳が目玉焼きかプラスチック
 のように変質して障害が出る、というようなことはありません。

  ただ、髄膜炎(脳膜炎)や脳炎などの中枢神経系の感染症の
 症状として高熱があるとき
は、脳に障害が出ることがあります。
 これは感染で脳に傷がつくからです。
  急に熱が上がるときに、熱性けいれんや錯乱状態などが
 みられることがありますが、これは一時的なもので、
 後には残りません。熱性けいれんなどについては、またいつかお話します。
熱ばかりに気を取られないで!
  子どもが火のように熱くなると、お母さんはとても心配しますが、
 熱の高さと病気の重さとはあまり関連がありません。ですから、
 熱が高いということ自体を怖がることはありません。

  大切なのは、熱の原因がただの風邪なのか、重い病気なのか、ということです。
 これは小児科のドクターに見極めてもらわなければなりません。
  一番大事なことは、熱だけではなく、子どもの全身状態です。
 たとえ微熱でも、
機嫌が悪く、元気もないようなときには、早めに診てもらって下さい。

教えて!ドク・オーチャン
?熱は下げた方がいいの?
  子どもの薬の使い方で、いつも迷っています。
 子どもの熱はそのままでよいといわれますが、38.5℃ぐらいあると、
 つい坐薬を使ってしまいます。8時間ぐらいはあけているものの、
 この間のインフルエンザのときは、5本も使ってしまいました。
 風邪のときも、よほどでない限り、市販の風邪薬ですませてしまいます。
 親の判断が難しい子どもの病気、悩みます。

お答え!
!熱は下げるべきかどうか、ドクターの間でも賛否両論です!
  私は、38℃以上あり、つらそうか、あるいはぐったりしているようなときは、
 熱冷ましを使った方がよいと思います。
  逆に、高熱があっても、ケロッとしているようなら、
 無理に熱を下げなくてもよいでしょう。

 解熱剤は病気を治す薬ではありません。ですから、
 病気自体が治っていなければ、解熱剤の効果が切れるころには
 再び熱が上がります。解熱剤は6時間以上はあけて、
 1日3回ぐらいまでにしましょう。

  解熱剤は、薬の種類によって効き目が違いますが、
 同じ薬なら、坐薬も飲み薬も効き目は変わりません。
 違った種類の解熱剤でも、時間をあけずに使うと熱が下がりすぎて
 ショック状態になることがありますから、注意しましょう。

  インフルエンザ脳症の原因として、比較的強力な解熱剤が
 作用しているといいます。アセトアミノフェンという解熱剤は、
 比較的安全といわれます。またインフルエンザの予防接種や
 感染初期の治療薬の投与などで、病状が軽くてすむようになりました。

  普通の風邪のときは、熱冷ましも含めて市販の風邪薬で
 十分なことが多いものです。しかし、数日以上熱が続くときは、
 小児科医に診てもらった方がよいでしょう。


坐薬の上手な使い方
  子どもは高熱のときによく吐いたりすることがあるので、
 下痢がひどくなければ坐薬のほうが便利です。
  1本丸ごとでは多すぎるようなら、薬の溶け込み具合を
 均等にするため縦に切ったほうがよいでしょう。

  坐薬は指で温めると軟らかくなりますから、
 適当に砲弾型になるように、形を整えて使いましょう。
  坐薬を入れるとき、まずウンコやオシッコが出そうなら、
 先にトイレに行かせましょう。
  子どもを横にさせ、必ずお尻の下にタオルなどを
 敷いてから膝をよく曲げさせます。大きな声で
 歌を歌わせたりして口を大きく開けさせると、

 楽に挿入できます。
  ワセリンやオリーブ油などで肛門を滑らかにすると、
 入れやすくなります。

  坐薬を十分奧に入れたあとは、足を少し伸ばしましょう。
 そして、力んで出してしまわないように、
 しばらくティッシュで肛門をおさえておきましょう。